朝起きる。 まだ朦朧とした頭で台所へ向かう。 自らの声を聞きながら、私は考える。 何を飲もう? 何を食べよう? 何に盛ろう?
春、夏、秋、冬。 季節は移ろい、私自身も移ろってゆく。 答えは、私の体だけが知っている。 その朝、瞳に飛び込んでくる光や影、肌に触れる空気や湿気。 過ぎ去った、昨日という一日。 今日、これから来るべき時間。 さまざまなことが、私の朝を決める。 自らが口にするものが、私の体を作り、思考を支えている。 昼が来て、夜を迎え、みなで食卓を囲み、また眠りにつくその時まで、 手にするもの、目に触れるもの、耳に入ってくるもの全てが、心地よいものであるように。 私は願う。 これからもずっと、願い続ける。
食べるもの、飲むもの、盛るもの、身につけるもの。 ずっと、選ぶことを忘れないでいたい。 選ぶことは、日々の小さな尊厳だ。 いいものを作っている人、心地よく暮らしている人は、いい顔をしている。 私も、いい顔でいられるよう、いい料理を、いい暮らしを、志している。
”最後の食事に何を食べたいか?” ごはん、みそ汁、のり、漬物。 ありきたりだが、私は、こう答えられる自分を誇りに思う。 どれも、日々、大切にしているもの。 米粒一粒、漬物一切れにいたるまで、決しておろそかにせず、心を込めて拵える。 だからこそ、どんなご馳走よりも尊い。 米を研ぐ。 だしを引く。 野菜を漬ける。 好きな飯碗、好きな汁椀、好きな皿。 ありきたりのものを、とびきりおいしく作り、自分が好きな器で食べる。 私の日々を支えるものが、みなさんの食卓にも届きますように。
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